嶺上開花マスターのくろもちです。

本編では準決勝大将戦が盛り上がる中
今だからこそちょっと考えてみたくなった内容です。

赤土晴絵。

シノハユにも登場し
徐々にその人間関係なども明らかになってきております。

阿知賀のレジェンドと呼ばれた彼女を中心に
咲-Saki-阿知賀編 episode of side-Aを振り返って
なんとなくしっくりこない部分について考えてみたいと思います。

久しぶりの長文妄想シリーズです。
お付き合い下されば幸いです。

スタート地点と終着点は鷺森灼



赤土晴絵。そして咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A。
これらを本編、そしてシノハユとともに読み返してみると
生粋のレジェンドファンである鷺森灼が
赤土晴絵が実業団で麻雀をしていることを知らなかった
という部分に違和感を覚える方が多いと思うのです。

情弱あらたそ、などとネタにされてしまうこの部分について
ある程度納得できる答えが導き出せないかというのが
今回メインで考える部分となります。

赤土晴絵と第一次阿知賀女子学院の距離感



ある程度時系列に沿って考えてみましょう。
本編から遡ること10年前。
あの夏のインハイの準決勝で第一次阿知賀女子学院は敗退しました。

あ、唐突に第一次阿知賀女子学院などと言ってしまいましたが
あの夏の阿知賀を第一次阿知賀女子学院
今年のインハイの阿知賀を第二次阿知賀女子学院
と区別して書いていきたいと思います。

さて、その帰路。
新子望さんと二人きりの描写です。

1


このシーン個人的にとても違和感を覚えたのですね。
他の3人はどうしたんでしょう?

もちろん幼少のみぎりのあらたそが待ち構えているわけですから
鷺森家のほどちかく。
望さんがいることから新子家の方角へ向かっていると思われます。

そしてシノハユで10歳の頃から松実館に立ち寄っていることからも
赤土家もご近所さんである可能性が高いことも分かります。

もちろん、東京までは一緒に帰ってきたこととは思います。
駅から帰路が異なる事も考えられますが
その、5人で一緒にいる描写をする意味が無かった
ということそのものが、つまりこの時点での
第一次阿知賀女子学院と赤土晴絵の距離感
になると思うわけです。

しかし、あの試合の顛末、赤土晴絵の心境を考えた際に
この描写はあまりにばっさりと2対3の構図になってしまうわけで
それは言い換えれば対赤土晴絵の構図、ということだと思ったのです。


第一次阿知賀女子学院の構成



先鋒 赤土晴絵。これは確定情報と考えてよいでしょう。
さらに新子望さん。オーダーは不明。
この2人以外の情報は、咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A 1巻p44~
高鴨穏乃が誰かから聞いたお話を語る、という描写でしか確認できません。
伝聞の伝聞になる訳ですね。

2


ここで高鴨穏乃が語ることは
・あの夏の阿知賀女子学院は強い面子が揃っていた。
・活躍した3年生がいた。
・みんなという表現から3年生は複数人いた。

このくらいでしょうか。

さて、これを高鴨穏乃に語ったのは誰か?
という問題がありますね。

候補としては、やはり
赤土晴絵、新子望両者なのですが

「赤土さんがこの教室をやってるのもリハビリみたいなもんらしいよ」
「チームメイトだった憧の姉ちゃんに勧められたとか…」

という台詞から、この2人は除外する必要があるかもしれないのですね。

さてさて。実はここで、物語の叙述の問題が出てきます。
Xが語ったことを高鴨穏乃が伝聞の形で我々に伝える。

問題となるのは高鴨穏乃が嘘をついていなくても
Xが嘘をついていれば、それは結果真実とは違う形で我々に伝わります。
そして、高鴨穏乃が勘違い、思い違い、はたまた思い込みをして我々に伝えてしまう場合。
この場合も、真実とは異なるものが我々に伝わりますね。

それは当然の事で、しかし創作としてどうなの?
と思われる方もいるかもしれませんが
実はこの叙述形式は創作上決してタブーではありません。
1990年台後半、トリック枯渇にあえぐ日本の新本格推理小説が
00年台へ向け、細くも生き延びた抜け道のような
それでいてかなり大胆な小説技法の1つなのです。

つまり、ここで高鴨穏乃に第一次阿知賀女子学院について語ったXが
相当にニュートラルな立場にいなければ
対赤土晴絵の構図として、どちらかに偏った伝え方をしている可能性が大いにある
ということですね。

後にシノハユであの夏のインハイについて描かれるのであれば
当然第一次阿知賀女子学院の構成についても触れられるはずですが
現時点でわたしは、このXが高鴨綾乃さんであると思っております。

そして、第一次阿知賀女子学院は
絶対エース赤土晴絵がほぼ1人で引っ張っているチーム
だったのではないかと思うのです。

第二次阿知賀女子学院同様に
部員集めにハルちゃんと望さんが奔走した可能性もありますよね。

ということはつまり、正確に伝わっていない。
強い面子が揃っていた、と伝えることで
絶対エース阿知賀のレジェンドの存在を薄めようとしていたのではないかと。

そう考えた理由を次に述べようと思います。


高鴨綾乃と赤土晴絵の距離感



1巻p.47のこのシーンも
少し違和感がありますよね。

3


「この人 6年前に阿知賀女子を負かした人だったねぇ」

この時点で穏乃は、こども麻雀クラブに通っている訳です。
そしてそこで指導しているのは
当時地元に阿知賀フィーバーを巻き起こした赤土晴絵です。

当然高鴨綾乃さんが、阿知賀女子学院に縁もゆかりも無ければ
さほどの親近感は無いかもしれませんが
インハイへの地元高校出場となれば
地元商店街ぐるみでの壮行や後援なども行っていたはずです。

となるとここでは
「晴絵ちゃんを負かした人」
もしくは
「あんたんとこの先生を負かした人」
という表現がなされるべきではないでしょうか。

しかし彼女はそうは言いませんでした。
これは相当距離感のある表現だと思うのです。

また、今回冒頭にあげた大会帰路のシーン。
慰労会すら行われていなかった模様です。

流石に初登場校が準決勝まで勝ち進んだのであれば
慰労会は行われて良いはずです。

後の第二次阿知賀女子学院メンバーとハルちゃんの再会の場面で
学校の偉いさんたちに人気があった、という表現があります。(1巻 p.128)

地元では人気がある、では無いんですね。

現実の例えば甲子園出場においても
現役の学校関係者、OB連、地元後援会、保護者会
それぞれが子どもたちに関係なく対立するというのは
21世紀となった今でもよくあるお話です。

もしかしたらこの時点で
それらに巻き込まれた赤土晴絵バッシングがあった
ということかもしれないと、思うのです。

下手をしたら
阿知賀のレジェンド
という呼び名そのものが忌み名である可能性もあるのかなと。

そんな中でただ1人
彼女を迎えた子がいるとしたら
それは可愛くてしょうがなくなっちゃうのも仕方ありませんよね。

鷺森灼の空白



しかし、そんなアラタチャーがその後のハルちゃんの動向にお冠だったわけです。

no title


ここで鷺森灼の認識をまとめると

・赤土晴絵が麻雀を打たなくなったのは知っている(小学1年)
・こども麻雀クラブの存在は知っているがあえて行かなかった(小学6年~中学1年)
・赤土晴絵が実業団に行ったことは知らない(中学1年)

ということになるわけですね。
括弧内は、その時のアラタチャーの年齢です。
そもそも、3年前に奈良から福岡へ行ったことすら認識していない訳です。

そしてさらに、年長~小学1年の頃に
わざわざ松実館に乗り込んで麻雀をしていたはずなのに
高校1年の時点では、クロチャーとはお互いに没交渉になってしまっていました。

良い子のクロチャーがオネエチャーに言われるまで
彼女のことを思い出せなかった程に、です。

ここも相当な違和感ですよね。

ここで考えたいのは、彼女たちを繋ぐ麻雀、そして親の存在です。

咲-Saki-においては、このブログでも何回か触れておりますが
家庭環境に問題がある子に特殊な強さがあるように思われます。
そしてそれは、おもう力を戦う力へ変換しているから、だと思っております。
親へ抗う力を戦う力へ変換している子もいる、ということですね。

鷺森灼においても、それは例外ではないのではないでしょうか。

また、幼少期における親の存在というのは、こどもに対して絶対的です。
もしかしたら、前述の赤土晴絵バッシングの流れで
赤土晴絵、そして松実館との絶縁を強制されたのではないでしょうか。

後に、祖母にあたる鷺森公子さんは
鷺森灼の味方であるような描写がありました。
となると、未登場の鷺森灼の両親。
ここがネックとなったのかもしれませんね。

親の言いなりになって、憧れの人や友人たちとの関係を崩さなくてはならない。
嫌だが逆らえない。
そんなどうにもできない自分への憤りを
赤土晴絵に対する憤りへ変換し、隠そうとした。
というのが、鷺森灼の心情だったのではないでしょうか。

クロチャーについては、松実露子さんの存在が絶対です。
鷺森さんちの灼ちゃんに迷惑がかかってしまうから
遊びに来なくても誘ったりしちゃダメですよ、というような言いつけがあったとしたら。
クロチャーの深層心理から、鷺森灼の存在が徐々に薄れていったとしても
おかしくはありませんよね。

こんな妄想ですが
・鷺森灼が赤土晴絵の情報をシャットアウトしていたこと
・松実玄が鷺森灼の存在を忘れていたこと

咲-Saki-阿知賀編 episode of side-Aを語る上で
大きな違和感を放つ2つのエピソードに
ある程度の理由つけができるでのはないでしょうか。

次回へ



少々長くなってきてしまいましたので
一旦今回はここで区切らせていただきます。

次回、再会した第二次阿知賀女子学院メンバーと
そして赤土晴絵を繋いだ大きな存在である
松実露子、新子望も含め
その心の距離感について、改めて考えてみたいと思います。

ということで、今回は以上!

カン!

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